千本丁字のたおやかさとは逆に、男性的な力強さを与えてくれます。収録した丁字の中では最も太く、雲母や胡粉の色使いなどによってさまざまな表情で大胆に変化する意匠です。
今日網代文様は装飾的な天井、下地窓や光悦垣、建仁寺垣と言った垣などに広く利用されておりますが、古来には宇治川や瀬田川に設けられた「梁(やな)」を意味し、茶室や数寄屋造りに建築素材として竹が多く用いられ竹細工は茶の湯の流行によって美術工芸までに高められました。 この度、簾を竹で網代にくみ、手漉きにて和紙に表現してみました。
竹の編み方には網目の形で四つ目編み、六つ目編み、八つ目編みのほかにざる目編みがあります。平らなものの場合は敷物の茣蓙や蓙の織り目と似ているところから茣蓙目編みとも呼ばれています。整然と組まれた網目の一本ごとにこまかな竹の繊維が写しとられています。
「すだれ」の語源は簀垂(すだれ)であり簀(す)は「すきま」から出た言葉で、もとは敷物と言われています。 商品は一本ごとに編み竹を面取りして、断面を楕円形に仕上げています。
楮などの靭皮繊維を主原料とした丈夫な和紙の表面にあらかじめドウサなどで刷毛引きし、薄い膠の層をつくります。その上に十分な量の染料を塗布して揉みます。揉まれて出来るしわの部分の膠は、割れて染料が強く染めつき、皺の少ない部分は薄く染めついて、陰影のある揉み紙の表情が出来ます。
雲間に輝く光のように、繊維の1本ごとが光線を反射し、水の流れとは違い雲の流れを際立たせています。穏やかで広がりのある雲の流れが感じられます。
越前の和紙は際だって美しいものとされています。丁寧に塵採りされた紙料を、いかに限りなく均等に分散させるかにかかっています。この紙は逆に紙料を遊離させてからさらに凝縮しました。花びらのように、柔らかな丸みのあるひとひらが、集い会っておぼろな文様をつくっています。 染め色は違いますが、京都迎賓館の和室の壁に使用されました。
越前の和紙の肌は穏やかで漉いた女(ひと)の温もりをも伝えてくれそうです。このような優しさをもつ和紙に少しばかりのあれ肌と、レリーフを与えてみました。際立って個性的な肌合いに見えますが、和紙の持つ本質的な柔らかさは、変わらず息づいています。
金・銀箔を蒔き散らす伝統的な技法を金銀砂子細工と言い、このように箔を全面均等に蒔いた物を「梨地蒔き」と呼びます。この金銀砂子細工は、細かく千切った金箔と三椏の繊維を水に混ぜて、湿紙の上に数回に混ぜて流し込み積層させたもので、それぞれの層ごとに箔の大きさと分量を替えて漉き重ねています。さらに表面に微細な三椏を上掛けして、金箔の光沢を控えめに押さえています。
金梨地と同じ技法で漉きます。銀箔は変色しにくいものを使用しています。
二枚の紙の間にさまざまなものを挟み込む技法を「漉き合わせ」と言います。細めの毛糸を漉き合わせて、立体感のある横丁字の意匠です。
和紙は雁皮や三椏・楮などの繊維を原料としてつくられています。正確には茎の外皮の内側にある靭皮を剥いで、叩解し、細かくほぐしたものを使います。この和紙は叩解前の筋を一本一本丁寧に手で千切り、長いままの姿で繊維を漉き込んでいます。長く太めの繊維の束は、重なり合い、絡み合って、自然素材ならではの素朴な風合いをかもしだしています。
漉いたばかりの湿紙の上に、ジョウロや連続して穴を開けたハイプに水を流しながら動かすと、水が落ちた部分の繊維が弾かれ、線や曲線の縞状の模様をつくります。水流紙の一種で、横縞の線模様が似ているため、すだれとも呼ばれています。
溜め漉きの特徴を巧みに利用した和紙です。金箔は細かく千切られ雁皮や三椏の繊維とからませます。さらに、着色した繊維や、手ちぎりのながい繊維などを用意し、ネリを適度に調合して流し込む紙料をつくります。この紙料を湿紙に流し込む際の早さや、角度、加えて、たね箱の巧みな操作が、雲の流れをきめます。簾の上の水の流れと繊維の流れの変化が、紙面全体に流れる雲の文様をつくます。おのずと一枚ごとの雲の流れがちがってきます。
横の縞模様を丁字とか筋と言います。線の太さで「五分丁字」や「一分筋」などとなずけられています。ここに収録したものは「千本丁字」とも呼ばれ、細かい丁字がかぞえきれぬほど多い事を意味しています。筋の意匠は、単純さの中に、ピンと張りつめた整然さと、たおやかさが同居し、モダンな表現になります。
幾重にも重なり合った垣根を八重垣と呼びますが、この言葉は「古今集」の序文の中に初美されます。
梅を題材とした文様は多彩で、数え切れないほどあります。 八重梅・丸梅・光琳梅・梅菱・のぞき梅・利休梅など・・・。 梅鉢は、シンプルで愛らしく表現してみました。
青海波の文様はトルファン地方で生まれ、シルクロードを経由して日本に渡来し、なみの文様としてつちかわれてきました。この松浪は松葉の文様で表現していますが、所々に配置した折れ松葉が単調な割付文様のアクセントになっています。
千本丁字のたおやかさとは逆に、男性的な力強さを与えてくれます。収録した丁字の中では最も太く、雲母や胡粉の色使いなどによってさまざまな表情で大胆に変化する意匠です。